ニルヴァーナの音楽とカート・コバーンの生涯

2019年の夏はニルヴァーナのデザインTシャツを着た人をよく見かけました。街を歩くたびにカートコバーンがこっちを見てくるので、なんだかムズムズする毎日。いったい何人がその胸元にプリントされた人物の偉大さを分かっているのかはさておき。GUからリリースされたグラフィックTシャツによって、多くの人がニルヴァーナに触れるきっかけを得ることになったと思います。久しぶりにニルヴァーナ聴いてみるかとなった人も多いかもしれません。僕もそんな一人です。ここではそんなニルヴァーナの音楽の魅力について紹介します。

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ニルヴァーナというバンドについて

1989年にアルバム「ブリーチ」でデビューしたアメリカ出身のロックバンド。

Vo/Gt カート・コバーン
Ba クリス・ノヴォセリック
Dr デイヴ・グロール

ヴォーカル&ギターのカート・コバーンを中心に結成された3ピースバンドで、80年代後半から90年代にかけて世界中に巻き起こったグランジ・ムーブメントの旗手。グランジとは「見苦しい」「汚い」「荒れ果てた」などの意味を持つ"grungy"が名詞化した"grange"が語源となっています。

当時はハードロック/ヘヴィ・メタルの全盛期。派手なメイクや衣装で着飾るバンドが多い中、Tシャツにジーンズといったラフな格好で歪の効いたギターをかき鳴らす姿は衝撃的で、ファッション面においても若者から絶大な支持を得ることになりました

音楽的にはシンプルなリフが主体となる楽曲が多く、カートの趣向であるパンク・ロックをルーツとしています。ただ、常にエイトビートで駆け抜けるパンク・ロックとは異なり、クリーントーンギターに乗せてささやくように歌うヴァースから、コーラスで一気に爆発するようにシャウトする姿が印象的となっており、「静と動」の振り幅が最大の特徴となっています。

ニルヴァーナが残した3枚のアルバム

1stアルバム「ブリーチ」

インディ・レーベル「サブ・ポップ」から1989年にリリースされた1stアルバム。ビルボード最高位89位とセールス的にはふるわないものの、洗練されていない荒々しさによって根強いファンも多い作品

不穏でゴリゴリなベースから入る#1「ブリュウ」で幕を明け、ノイジーかつ鬱屈した楽曲が並びます。基本的にはパンク・ロックをベースとしながらも、エアロスミスやレッド・ツェッペリンといったハードロック・バンドも好きだったカートの音楽性が反映された、ダイナミズムが感じられる楽曲も収録されています。#4「スクール」や#10「Mr.マスタッシュ」のギターリフ、作品全体に感じられる躍動するドラムとベースのリズムには、ハードロックの影響を感じます。

この作品の中では#3「アバウト・ア・ガール」の完成度が抜群。粗削りでシャウトしまくりな楽曲が並ぶ中、カートのメロディセンスと、後にニルヴァーナらしさとなっていく「静と動」の振り幅の片鱗が見られる楽曲となっています。

2ndアルバム「ネヴァーマインド」

「ゲフィン・レコード」と契約後、1991年にリリースされた2ndアルバム。ビルボードで1位を記録し全世界で大ヒット。ニルヴァーナが大ブレイクするきっかけとなったアルバムであるとともに、あまりに売れすぎてメジャー志向でないカートが苦しむきっかけともなった作品

このアルバムのリード・トラック、#1「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」は一度聴いたら忘れられないイントロのギターリフと、フラストレーションを一気に爆発させるコーラス。時代を反映した歌詞の内容によって、グランジ・ムーブメントを象徴する楽曲となっただけでなく、ロックシーンに永遠に刻まれるアンセムとなりました。

アルバムを通して1stとは比べ物にならないくらい音がクリアになっただけでなく。陰鬱な歌詞の内容や、音圧の激しさとは裏腹にメロディは非常にキャッチー。さらに演奏自体も超絶技工を必要とせずシンプルなものだったため、コピーのしやすさもブレイクのきっかけになりました。ただ、いくらコピーしやすいといっても当然同じような音が出せるはずもなく、ましてカートのヴォーカルなんか真似しようものならヒドイ有様に。時代に選ばれるバンドですからね。やっぱり唯一無二の存在です。

さて、このネヴァーマインドの大成功によってバンドは順風満帆に行く訳ではなく、もともとインディ/アンダーグラウンド志向だったカートは、メジャー市場を意識してリリースしたこの作品の成功によって苦しむことになります。後のインタビューでも作品自体を否定する発言をすることも多く、世間の作品に対する評価に反比例するかのように毛嫌いしてしまいます

3rdアルバム「イン・ユーテロ」

前作ネヴァーマインドの大成功によって、より顕著になったバンドのアンダーグラウンド回帰への想いが形となった3rdアルバム。この作品でもビルボードで1位を獲得。重々しい内容の作品ながらセールス面でも一定の成功を収めましたが、リリース翌年、カートの死によってバンドとして最後のアルバムとなってしまいました。

1stアルバム「ブリーチ」で見せた荒削りな衝動によるバンドサウンドや、2ndアルバム「ネヴァーマインド」のある意味洗練されたポピュラリティーのあるサウンドは、異なるサウンドアプローチながら外へと向けられたものでした。しかし、イン・ユーテロ収録の楽曲はカートの内面を色濃く映し出した内向きのサウンドとなっていて、サウンドもヴォーカルもこれまでの作品以上に生々しく心に突き刺さります。

特にこれまで以上に緩急がつけられたカートのヴォーカルに鬼気迫るものがあり、#2「セントレス・アプレンティス」での悲痛な叫びのようなヴォーカル、#3「ハート・シェイプ・ボックス」での憔悴しきったような歌いまわし。#8「ミルク・イット」での不穏な囁きからの強烈なシャウトなど、カートの心の叫びが痛々しく突き刺さってきます

発売当時こそネヴァーマインド路線を期待したファンからの批判もあったようですが、今ではよりバンドとしての真の姿が反映されたこの作品を最高傑作とするファンも多くなっています。

カート・コバーンの生涯

ニルヴァーナのフロントマンであり、死後も何年にもわたりフォロワーを生み出し続けるカート・コバーン。1967年2月20日に生まれ、1994年4月5日に生涯を終えた悲劇的なロックスターはどのように生き、そしてこの世を去ったのか。

ビートルズを好み幸せな幼年期を過ごしていたカートですが、1975年に両親が離婚すると内向的な性格に変わり、学校でも友達を作らず図書館で本を読んで過ごすことが多かったそうです。バンドを結成するきっかけとなったのは、ハイスクール時代のパンクバンド「メルヴィンズ」のリーダーであったバズ・オズボーンとの出会い。後々フィーカル・マターというバンドで彼ともバンド仲間となりますが、長続きせずすぐに解散することになります。

周りにヘヴィ・メタル志向の人間が多い中、カートと同じくパンク・ロックを愛好するクリス・ノヴォセリックと出会うと意気投合。出会ってから1年後ニルヴァーナを結成します

その後「ブリーチ」「ネヴァーマインド」をリリース。ネヴァーマインドリリース後の1992年ににはコートニー・ラブと結婚。そして娘のフランシス・ビーンを授かり、表向きはバンドの商業的な成功に加え、プライベートの充実といった順風満帆な歩みかと思われました

しかしネヴァーマインドの成功により、もともとインディ志向の強かったカートは自分の信念を裏切ってしまった感覚に陥り、さらにメディアの中の自分と本当の自分の乖離にも戸惑うことになります。その後リリースされた「イン・ユーテロ」は、そんな心情を生々しく映し出した内省的な作品となりました。

そしてその頃には少年時代からのうつ病と、持病であった原因不明の胃痛に苦しむ日々の連続。開放されるために手を出す薬物により、さらに苦しみを抱えることになります。そんな負の連鎖を断ち切るように1994年4月5日、シアトルの自宅にて、ショットガンを使用し自身の手で頭部を打ち抜き短い生涯を終えます

ニルヴァーナが残した音楽の価値

僕が初めてニルヴァーナを聴いた時はすでにカートはこの世から去っていました。洋楽の名盤を聴き漁っている中で、当然「ネヴァーマインド」にもたどり着くことになり、そして当然「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」に衝撃を受けることになります。その後カート・コバーンという人物について知っていくうちに、それぞれの作品に彼の魅力という付加価値がついていくのですが、やっぱり改めて感じるのが音楽そのものの魅力

しばらくニルヴァーナを聴いていませんでしたが、今回久しぶりに3枚のアルバムをしっかり聞き直してみて思いました。なんてカッコいいんだと。初めて聴いた時の気持ちと同じような気持ちになれる作品たち。これから初めて触れることになる方も、当時からのファンも変わらず聴き続けられるのがニルヴァーナの音楽だと思います

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