tipToe.「daydream」は、楽曲派に贈るアイドルポップスの完成形

アイドルと言えば口パクで楽曲もとりあえずキャッチーでノリがいいだけ。こんなイメージの方も多いのではないでしょうか、実際僕もそうでした。しかし楽曲の良さを売りにできるアイドルも多数存在しており、そんなアイドルを応援するファンを”楽曲派”と呼ぶそうです。2019年4月17日リリースのtipToe.の2nd ALBUM「daydream」は、そんな楽曲派も納得の完成度が高い作品になっています。

tipToe.「daydream」
1.The Curtain Rises
2.Cider Aquarium
3.秘密
4.茜
5.アフターグロウ
6.はやく夜が明けて、おはよう。が言いたい。
7.blue moon.
8.砂糖の夜に
9.ナイトウォーク
10.星降る夜、君とダンスを

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3年縛りのアイドル

楽曲について触れる前に、まずはtipToe.というアイドルの紹介から。

「みんなで青春しませんか?」をコンセプトとして2016年12月に結成。メンバーは3年任期制となっていて必ず3年で卒業します。女性アイドルの卒業問題は、グループを運営するにあたって結構大きなネックになっていると思うのですが、任期性という形はアイドル運営にとって理想的な形かなと思います。

任期性を取ることでファンにとっては推しがいつ卒業するのかという不安感を拭えます(それでもさみしいのは間違いないですけどね)。運営側にとっても、あらかじめ追加メンバーのオーディションが行なえるなどメリットはありそうです。3年といえば中学生や高校生が入学して卒業する期間で、多くの人が卒業をイメージしやすい期間でもあります。また、アイドルの魅力のひとつでもある限られた時間での一瞬の輝きも表現しやすくなりそうです。

そんなtipToe.の音楽性は、青春というコンセプトのもと、ギターロックやエレクトロニカの要素を含んだちょっとセンチメンタルなサウンドが中心。メンバーの下手ではないけど上手すぎないボーカルが完成度の高いオケに乗っかるアンバランス感が非常に魅力的です。

ジャンルレスな魅力

さて、ここからは本題の「daydream」の魅力についてです。

#1「The Curtain Rises」はイントロの跳ねるようなピアノとギュインギュインなギターリフが印象的な、BUMP OF CHICKENやASIAN KUNG-FU GENERATIONを彷彿とさせるようなギターロックナンバー。つづいて4つ打ちダンスポップの#2「Cider Aquarium」。こちらはPerfume meets やくしまるえつこ感のあるキラキラでふわっとした楽となっています。#3の「秘密」はビッグバンドジャズの要素を取り入れた、ジャニーズ系アイドルのアルバムに入ってそうな楽曲に。

その後も女性シンガーソングライターが歌ってそうな#4「茜」に、王道バラード#5「アフターグロウ」と一曲ごとに個性の違う楽曲がずらりと並びます。これこそがアイドルポップスの魅力であり最大の強み。ひとつのジャンルにこだわること無く、曲ごとのコンセプトに合わせて作家陣も変えながら楽曲制作ができます。

そしてそんな楽曲たちが、ひとつの作品として統一感を持てるのは紛れもなくアイドルたちの声があるから。よくアイドルの声は特徴がないとか言われますが、特徴的すぎると多彩なジャンルに対応するのも難しいでしょう。方向性の違う楽曲をフラットに楽しませてくれる、彼女たちの声の魅力も忘れてはいけません。

後半のコンセプト的な流れが素晴らしい

そしてジャンルレスに楽曲を作成できるということは、もちろんコンセプトを持たせた流れも作れてしまうということ。今作の後半の#7~#10は”夜にまつわる物語”をコンセプトに作られた限定シングル「thirdShoes.」に収録された楽曲を曲順もそのままに収録。そこにポエトリーリーディング調の#6「はやく夜が明けて、おはよう。が言いたい。」を収録して、世界観を完成させています。

このコンセプトの象徴的な楽曲となっている#7「blue moon.」ですが、この楽曲はドビュッシーの「月の光」をモチーフとしていて、イントロと間奏に印象的なフレーズがアレンジして引用されています。低音の効いたベースラインとクリーントーンのギターによるコントラストがとても美しく、その狭間でリフレインするピアノの音色にも心を奪われます。終始ファルセットと地声の間で淡々と歌うボーカルの無機質さと、演奏の生々しさが美しく噛み合い作家陣のセンスを感じました。個人的に夜を連想させてくれる楽曲が好きなのですが、プレイリスト入り決定です。

そしてポストロックサウンドのポエトリーリーディング#8「砂糖の夜に」、リズムのタメが心地いい#9「ナイトウォーク」をはさみ、アイドルらしいノリのいい夜を楽しむ楽曲#10「星降る夜、君とダンスを」で作品は幕を閉じます。

シャッフル再生したくない作品

今はYouTubeやサブスクサービスなど、スマホで簡単に好きな楽曲が聴けるようになりました。通勤や通学時間に、好きなアーティストの楽曲をシャッフルにして聴いている方も多いと思います。 そんな中、前半はジャンルレスアイドルポップスを聴かせてくれて、後半には夜を連想させるコンセプチュアルな流れをつくりつつ、また#1へと自然な流れでもっていく。tipToe.の「daydream」は アルバム1枚を曲順通りに通して聴きたくなる作りになっていて、作者側の音楽への情熱がしっかりと反映されている作品となっています。

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